コロナ禍の今こそ犠牲になっている大学生を救いたい! ~先輩たちの伝統を受け継げるように試行錯誤しながら奮闘する学生を取材~
2021年9月2日(木)14時、母校の神戸市外国語大学(以下、外大とする)の現役学生と対談する機会をいただいた。
事前情報では、外大にて70年の歴史を持つ語劇祭の開催が危ぶまれ、さらに70年続く語劇団そのものの存続が危うい状況だとのこと。
僕も10年前に舞台を観覧したことがある。
英語、ロシア語、中国語、スペイン語で繰り広げられる劇は、裏方、演者、監督・演出、委員会が一丸となって作り上げた圧巻のパフォーマンスであり感銘を受けた一人である。
コロナ禍の今、大学生の生活はどうなっているのか。
コロナ禍で何が問題で、学生は何を訴えているのか深堀していく。
対談参加者(4名)
富井(とみい)さん:英米学科5回生、1回生から英米語劇団で音響、2回生から語劇祭実行委員会に参加。3回生時に語劇祭実行委員会委員長。学生情報共有サイトKCUFS+立ち上げ人。学生自治会 現自治会長。
田林(たばやし)さん:中国学科4回生、1回生から中国語劇団で音響、3回生時はオンラインでの紙芝居作品作りに音響&広報・SNSとして参加。現在はヘルプとして音響など裏方のノウハウの引継ぎや役者の発音指導をサポートしている。オンラインホームカミングデー(OHD)実行委員。
児玉(こだま)さん:外大OB、キャリアコンサルタントなど
Tetsuya:外大OB、Cotoba PRESSライター
語劇団の構成図(2021年9月現在)
※対面での語劇祭運営や詳細を詳しく知っているのは現4回生が最後
※「対面時代」を知っている部員が少ない⇒このままでは技能やノウハウが伝承できないことを危惧
語劇団の状況
コロナ禍以前
週5回の練習
本番前には週6、7回の練習(3限(12:45)~20:30時前後)
蔓延防止措置中
・週1回2時間の活動しか許されない状況
テスト期間中(折衷案)
・週1回3時間(1か月で3、4回の対面練習のみ)
緊急事態宣言中(2021年9月2日時点)
・部活動/課外活動・・・・全停止中
語劇団の課題
・対面練習が十分にできない
・ソーシャルディスタンスの確保
・マスク外せない
・大きな声に制限あり
・向かい合わずに演劇をする方法が見つからない
・道具がない、作れない
・衣装を買えない+演劇用のメイクをすることもできない
・決められた活動時間を超えることができない
⇒技術継承できない(役者の演技・発声、発音指導、裏方の機材操作など)
外大の現状
・どの部活動/課外活動も廃部の危機
・一人暮らしで行き場を無くし、家から一歩もでない学生もいる
・アバイト減少
・帰省や外出自粛の呼びかけ
・学生ならではの部活動やボランティア・スピーチコンテストやイベントなどの課外活動の制限
・友達関係構築に難あり
社会の現状
・高校では部活しているところが多い(インターハイ・甲子園など実施)
・感染対策をとった上で公演していた他大学はある
・オリンピック・パラリンピックは行われている
・イベントがことごとくなくなり、卒業アルバム(大学生の場合は就職活動時に使う自己PRの写真が該当)に掲載する写真がない学生たちがいる(密を避けるため集合写真すらないという事実)
学生や現場で働く職員からの意見
・なぜ大学生だけがオンライン授業なのか
・この状況を続けるのかと強い危機感
・失われていく貴重な時間
大学関係者(責任者)からの意見
・規制を重視
・何か起こってはいけない
舞台演出に代わる各種代替案とその問題点
野外公演
・照明が使えない
・音響機器が使いづらい
・機材ノウハウを先輩から後輩へ伝承できない
オンライン練習・公演
・オンラインでは譲り合いが発生、2人以上が同時に話せない
・休憩中など各々が意見交換できる対面練習のようにはできない
・PCスペック、電波、家庭の事情で大きな声が出せない問題など
大学内の施設利用
・他の部活動/課外活動も利用することがあり施設の調整が困難
事前の動画撮影・公開
⇒実際に2020年、一部の語劇団で感染対策を徹底した上でオンライン公開した実績あり
・役者の生の顔を見ることができない
・感動の共有に劣る
・動画編集の負担が増える(録音時にパトサイレンや呼び鈴・工事音などの音や電波トラブルも多々発生+長時間のオンライン活動が難しい)
2020年度中国語劇団アニメ中国語劇場「你好,打劫!」のYouTube限定公開のURL
新型コロナウイルスの影響により例年通りの活動ができない中、先輩たちの伝統を受け継げるように試行錯誤しながら動画を作成した中国語劇団
《あらすじ》
とある閉店間際の宝石店が強盗に襲われる。犯人のサリーとベンは宝石店員を人質に立てこもる。早く帰りたい…人質たちから不満が噴出し、窮地に陥ったサリーはとんでもない作戦を思いつく!2人はなぜ宝石店を襲ったのか?宝石店員たちは無事に帰ることが出来るのか?本当の強盗は一体誰なのだろうか…?
■動画を視聴された方へ(アンケート)
貴重なご意見を参考にさせていただければと存じます。
ぜひアンケートへのご協力をお願いいたします。
練習・本番ができるようにする具体案
・ワクチン2回接種を受けた学生から対面練習の許可を出す
・社会人劇団の知見をいただき実現可能性を探るなど
まとめ
今回は最近のニュース(半ばタブー視)では取り上げられることが少ない学生の「生の声」を聴くことができた。
高校生の頃から語劇団を観覧して憧れを持ち、外大に入学してきた学生もいるという。
そんな70年の伝統ある語劇団は、本来大学が何らかの知恵を絞って開催できるように援護すべき事案であり、決して学生の声をないがしろにするべきではない。
学生がいて大学運営は成り立つ。
自分たちの声が形にならず、社会のしわ寄せをグッとこらえてきた学生たち。
他の活動や大学へ迷惑をかけないという信念を持ち続けてきた学生たち。
感染拡大の防止に協力して大学のルールを守ってきた責任感のある学生たち。
コロナ禍で語劇団を存続させるためには、学生たちと大学はどうすればいいのだろうか。
これまで学生たちは大学運営に協力してきた、今度は大学が学生たちに協力する番ではなかろうか?
どうか学生たちを応援してください。
あなたのご意見をお待ちしています。
それではまた。
追加情報:2021年9月2日午前中(本取材日)
外大役員から語劇祭開催に向けて前向きに検討するとポジティブな回答(※)をいただけたとのこと。一歩前進である。
※.こういった状況に対して、自治会を中心にして各学生団体に現状把握のアンケートを実施。集計結果をとりまとめ懇願書を外大役員会に提出していた。
追加情報:2021年9月15日
学生から学校の練習ルール変更について情報を得ることができた。
学生の声が大学側にも届きだしていると感じ、両者少しでも良い方向に改善され、嬉しい気持ちになった。
- 学校の課外活動に関する制限のルールが変更されたと連絡を受けた。
- 緊急事態宣言中でも語劇など公式試合・イベントにあたる団体は活動可能になった。
- 緊急事態宣言中以外は全団体活動可能になり、どの期間でも週3回各3時間まで活動可能になった。
外大の語劇祭とは
英米、ロシア、中国、イスパニア、第2部英米学科の5つの劇団が、それぞれの専攻する言語を用いて劇を上演するものである。
今年度、コロナ禍で最速で9月14日から練習が始まる語劇団があり、10月には本番2か月前を迎える。
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